学校で教えられる家庭の技術: 家庭科と情報教育について

峰木一春 (修徳高等学校)

家庭科教育について

家庭科というと、昔はお料理やお裁縫というような家庭の中における技術を習得する事が中心でした。しかし、近年は生活全般に関わる事を対象に日常の生活とその人々を取り巻く環境を相互的に考えるという形になってきました。内容も非常に広範囲で化学・統計学・経済学・社会学に至るまで幅広い内容を学習します。家庭科というと「女子の教科」というイメージがありますが、1985年にわが国が女子差別撤廃条約を批准したことなどが大きく影響し、1994年には高等学校では家庭科の男女共修が実現しました。表面上は豊かな生活を手に入れたように見える現代社会ですが、実際は精神的に多くの問題を抱えたり、大切なものを失ったり、日本古来の文化を失ったりというような状況があります。このような社会の中で生活する我々にとって日々の行為一つ一つの繋がりや関連等を考え、より良い生活を築くものが家庭科教育と考えます。

ここで私が家庭科の授業で話す内容を少しお伝えしたいと思います。本校の形態は同じ敷地内に男子・女子別学という数少ないケースの学校で、男子部の生徒はなぜ家庭科を学ぶのかということに関して疑問点を持つ場合があります。そのため、最初の授業で次のように家庭科の必要性を説明しています。従来、日本においては教育というと知育・徳育・体育という形がありました。現在でも各学校においてその重要性を認識し、教育を行っています。また、その証拠に校章などでは三つの様々な形を組み合わせ、それを知育・徳育・体育の象徴として教育の基本として表現したりしています。しかし、急激な社会の変化への対応と将来、人々が対応できるように従来の三つのものに加えて新しい教育が必要になってきました。いままでは家庭の中で伝えられてきた生活に必要な様々な技術が家族形態や環境の変化にともなって十分に伝わることがなかったり、失われたりしてしまいました。そこでその技術等を補う新しい教育が必要になってきました。その教育を表現するならば「知育・徳育・体育」に対してここでは「生活育」という言葉で表現したいと思います。([生活育]は女子栄養大学の伊藤央子(ようこ)先生が家庭科教育法の授業の中でお話をしていました。)

この生活育とは、家庭科の教科目標(H15 〜)である「人間の健全な発達と生活の営みを総合的に捉え、家族・家庭の意義、家族・家庭と社会と関わりについて理解させるとともに生活に必要な知識と技術を習得させ、男女が協力して家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育てる」の内容と同じで、現代社会において「知育・徳育・体育」に加えて新たな教育の柱として考えられます。家庭科全般に言えることは「人が生きていく上で切り離す事のできない様々なことを学ぶ事ができる唯一の教科である」で男女共修も始まり家庭科教育のより一層の充実が図られつつあります。

また、将来の家庭科のあり方としては幅広いが故に他教科で学んでいたような状況のある環境・経済・情報などをより積極的に家庭科内で取り上げていく必要があると考えます。その事により家庭科教育の深化が図れ知識の定着もあると考えます。

家庭科と情報教育

日常生活の中でコンピュータというものから離れて暮らすというのは極めて難しく、朝起きてから寝るまでの間、我々は生活の中で多くのコンピュータに接しています。例えば、起床の時刻設定から通勤・通学時の交通機関でのキップ購入そして職場や学校でのインターネットの活用や情報入手、買い物の時のPOSシステム等々挙げれば限がないくらい多くのコンピュータに囲まれ生活を送っています。このような高度情報社会において生活している人々にとっては常に入手した情報をもとに的確な判断が求められています。なぜならば人々は生活の向上を目指し、そのために入手した情報を活用して家庭や社会生活で快適性や安全性などを追求していくからです。このような社会で暮らす人々は情報の正しい活用の方法を身に付ける必要があり、いままで家庭の中で伝えらていた技術とは違い、新たに生まれてきたものをしっかりと学ぶ必要があります。今回の学習指導要領改訂においても教育課程の編成・実施に当たって配慮すべき事項のなかで「コンピュータ等の情報手段の活用」が示されているようにそれに適しているのが学校と考えられます。

現代社会は、情報通信ネットワークの発達やそれに接続する家庭のコンピュータの普及により、家庭内の情報化の進展とともに爆発的に身の回りにある情報量が増大しています。その中で生活する生徒に対して「情報」とはなにかということを考えさせると同時に情報リテラシーを育成することが重要になってきます。情報には様々な形があり、人が直接体験することとコンピュータを通して体験することには大きな違いがあり、具体的なものとして調理実習などの完成例をコンピュータ上で予め見ることはできますが、料理の味やテクスチャー(触感)を体験することは不可能です。特に家庭科における情報教育は、生徒に対して直接体験+疑似体験という形をとることでより生活に密着し、家庭科としての教育の充実が図れると考えます。本校では家庭科の授業のひとつとして家庭情報処理を男子部で2単位実施していますが、内容のひとつとして家庭科全般をベースにインターネットを使い、家庭生活に関連するキーワード(ノーマライゼーション・ジェンダーフリー・携帯電話・酸性雨・環境ホルモン・ダイオキシン・高齢化社会・クーリングオフ・IT革命・情報格差等)を用いて検索を行い、その後、結果をレポートとして各自が自分自身の生活に照らし合わせてまとめ、各グループやテーマごとに討論するという形をとったりしています。「ジェンダーフリー」を選択した生徒の中には、自分の生活に照らし合わせて考えた場合、外国の考え方をそのまま踏襲するのではなく、日本の実情にあったジェンダーフリーがあっても良いのではないかという意見がありました。その是非は別として、日常生活や環境を考慮した上で独自の考えを見出すことは家庭科の中における情報教育の形ではないかと考えます。家庭では、家の技術を情報として共有することや蓄積し、伝えていくことなども考えられますが、家庭科という観点から様々なことを考えた場合、家庭においても情報リテラシーを育成することが重要と考えます。