『家の中』でお会いしましょう

仲谷美江 (大阪大学大学院基礎工学研究科)

このシンポジウムにコメンテータとして呼ばれたのは、多分認知科学の専門家とは少し違った視点を提供できると思われているのではないでしょうか。

私は、現在の大学に来る前に、企業の研究所に十数年勤めていました。工学者の中の心理学者というのは微妙な立場でありますが、その中で自分なりに見つけた存在意義とは、問題を見つけること、問題に対して新しい視点を提供すること、問題をモノ作りにつなげる橋をかけることです。工学者、特にメーカの技術者は、自分の持っているシーズを何かに応用できないか、という視点から問題を見ます。すると問題は、シーズをどのように適用できるか、という問題に置き換わってしまい、問題の本質はおきざりにされがちです。

心理学者はモノ作りの技術を持たないだけに純粋に問題を見ます。私は、学生時代は社会心理を専攻していましたので、常に人間と人間、人間と場、という社会的相互作用に焦点をあてる習慣があります。相互作用という視点で見た問題は、技術者にとってコミュニケーション支援というテーマに変換され、意図伝達、状況の把握などの機能を生み、システムへとつなげることができました。

本シンポジウムでは、心理学者や教育学者の方々に、このような視点が何を提供できるのか。新しいアプローチは生まれるのか。を私も愉しみにしたいと思います。

最後に、個人的には本シンポジウムに対して、「家の中」は「家の外」とどう違うのか、という明解なテーゼを期待しています。職場や学校での研究方法論をそのまま家の中にあてはめればよいのか、家の中から外を見たら何が見えるのか。認知科学会らしい議論が愉しみです。